アルゼンチン代表としてワールドカップ優勝を経験し、インテルではキャプテンとしてセリエA制覇に貢献。ラウタロ・マルティネスは今やクラブ、代表の両方で欠かせない存在となった。若くして欧州へ渡り、成長を重ねながら、得点力だけでなく、献身性と戦術理解の高さでも評価されるストライカーへと進化を遂げた。
本記事では、そんなラウタロの歩みを振り返りつつ、彼のプレースタイルを具体的なプレーやデータを通して掘り下げていく。
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ラウタロ・マルティネス|基本情報
【基本情報】 | Lautaro Javier Martínez |
---|---|
①生年月日 | 1997年8月22日(27歳) |
②国籍 | アルゼンチン |
③身長/体重 | 174cm/72kg |
④所属クラブ | インテル・ミラノ |
⑤ポジション | FW |
⑥背番号 | 10番 |
⑦利き足 | 右足 |
⑧推定年俸 | 750万ユーロ |
ラウタロ・マルティネス|経歴
年 | クラブ | 出場 | 成績 |
---|---|---|---|
2015 | ラシン・クラブ ![]() | 1 | -G:-A |
2016 | ラシン・クラブ ![]() | 3 | -G:-A |
2017 | ラシン・クラブ ![]() | 23 | 9G:1A |
2018 | ラシン・クラブ ![]() | 21 | 13G:5A |
18/19 | インテル・ミラノ![]() | 27 | 6G:2A |
19/20 | インテル・ミラノ![]() | 35 | 14G:5A |
20/21 | インテル・ミラノ![]() | 38 | 17G:10A |
21/22 | インテル・ミラノ![]() | 35 | 21G:3A |
22/23 | インテル・ミラノ![]() | 38 | 21G:7A |
23/24 | インテル・ミラノ![]() | 33 | 24G:6A |
24/25 | インテル・ミラノ![]() | 31 | 12G:5A |
◆ ラシン・クラブ(2015–2018)
アルゼンチン北部のバイア・ブランカ出身のラウタロは、地元クラブで頭角を現したのち、16歳で名門ラシン・クラブの下部組織に加入。2015年にトップチームデビューを果たすと、南米リベルタドーレス杯でも得点を挙げるなど、一気にブレイクしました。
エピソード: 若き日のラウタロはもともとバスケットボールに熱中していたが、父親の勧めでサッカーに転向。ある試合でハットトリックを達成した直後、対戦相手の監督が「この選手はここにいてはいけない」とコメントしたことが話題となり、欧州のスカウトの目に留まるきっかけとなった。
◆ インテル(2018–現在)
2018年夏、イタリア・セリエAの強豪インテルに加入。当初は途中出場が中心でしたが、ロメル・ルカクとの「ルラ」コンビで一躍スターダムへ。俊敏な動きと献身的な守備、ゴールへの鋭い嗅覚で評価を高め、2020–21シーズンにはセリエA優勝を経験。現在はチームキャプテンも務めています。
エピソード: インテル加入初年度、ミラノの空港でファンに囲まれた際、「君はインテルの未来だ」と言われたラウタロは笑顔で「じゃあ未来を今から始めよう」と返答。このエピソードはサポーターの間で語り草となっています。さらに、2023年にはセリエA得点王争いをリードし、クラブの象徴的存在としてその地位を確立しています。
ラウタロ・マルティネス|プレースタイル
ラウタロ・マルティネスのプレースタイルを形成するのは、主に次の4つの要素である。
- リーダーシップ
- ゴールを決める決定力
- 攻撃の起点としての振る舞い
- 守備面での貢献
ラウタロ・マルティネスのプレースタイルを形成する4つの要素について、以降で詳しく見ていく。
リーダーシップ
ラウタロ・マルティネスは、インテル・ミラノのキャプテンとして、強烈なリーダーシップを発揮している。どちらかと言えば、言葉より行動で引っ張るタイプのキャプテンだ。
キャプテン就任(2023年夏):前キャプテンのハンダノヴィッチが退団後、若くしてラウタロが主将に就任した。この決定は「実力だけでなく、人間性とチーム内での信頼の厚さ」が評価された結果だった。
2023-24シーズン開幕戦での鼓舞:シーズン初戦で味方が緊張しミスを連発。その中でラウタロは怒らず、積極的に声をかけ、「俺たちならできる」と何度も鼓舞。結果、2ゴールを決め、自ら勝利に導いた。
新加入•若手選手への支援:加入直後のマルコ・アルナウトヴィッチや若手FWたちに対し、「まずチームに溶け込むことが大事」と自ら練習後に個別トレーニングに付き合う場面も報じられている。
クアドラードのサポート:ラウタロは、ユベントスからの移籍でファンの反発を受けたクアドラードに対し、試合後に温かい抱擁を送り、サポーターにも歓迎するよう呼びかけた。
勝利への強い意欲:インテルがセリエAで優勝した際、ラウタロは「90分で歴史を作る」とチームを鼓舞し、優勝を達成した。このような強い意志が、チームの士気を高めている。
ゴールを決める決定力
ラウタロ・マルティネスの決定力は、彼をトップレベルのストライカーたらしめている最大の武器のひとつである。
多彩な得点パターン:ラウタロは、左右両足とヘディングのいずれでもゴールを奪えるバランスの取れたフィニッシャーである。ゴール前での動き出しが鋭く、狭いスペースでも冷静にシュートを打ち分けることができる。
ポジショニングの巧さ:彼の決定力は、単にシュート技術だけでなく、ゴール前での位置取りのうまさにも支えられている。相手DFの死角から飛び出し、クロスやスルーパスに対して最適なタイミングで合わせる嗅覚に優れている。
プレッシャー下での冷静さ:ビッグマッチやプレッシャーのかかる場面でも、ラウタロは落ち着いて決めきる力がある。GKとの1対1でも慌てることなく、状況に応じてループやコースを狙う柔軟性も持ち合わせる。
ミドルレンジからの得点も可能:ペナルティエリア内だけでなく、エリア外からのミドルシュートでもゴールを狙えるのもラウタロの特長。それも左右両足で。これにより、相手DFは彼に対して常に距離を取れず、守備陣の対応を難しくしている。
攻撃の起点としての振る舞い
インテルは、主に3-5-2のフォーメーションを採用。ラウタロは2トップを組むテュラム連携しながら、攻撃の起点として機能する。
ライン間でのポジショニング:ラウタロは中盤と最終ラインの間に位置取りし、ボールを受けて攻撃を組み立てる。この動きで相手CBを引き出し、空いたスペースに2トップの相方であるマルクス・テュラムが走りこむ形が多く見られる。
ポストプレーと連携:背中で敵CBのチャージを受けながらもボールをキープし、ワンタッチやスルーパスで味方を活かす。特にマルクス・テュラムとの連携では、相手守備陣を混乱させる動きを見せている。
ドリブルと創造性:南米出身の選手らしく足元の技術が高いプレイヤーである。狭いスペースでも器用なドリブルで相手をかわし、攻撃のリズムを変える。また、ラボーナパスなどの創造的なプレーも時折見せる。
守備面での貢献
先述の通りインテルは主に3-5-2のフォーメーションを採用しており、守備時にウイングバックが下がり、5-3-2の形でブロックを形成する。
ラウタロはこの中で、前線からのプレスを担当し、相手のビルドアップを妨害する「ファーストディフェンダー」として機能している。
彼の守備の最大の特徴は、プレス時の角度とタイミングの優秀さにある。無闇に前に出るのではなく、パスコースを読みながら、確実にパスコースを限定するプレスで、ボール保持者の選択肢を制限。背後から味方の中盤がボールを刈り取れるような形を意識しており、組織的な守備戦術の中で機能する選手である。
また、トランジション局面でも素早く切り替え、セカンドボールへの反応がとにかく速い。これにより、相手が前進する前に再びプレッシャーをかけ直す「リプレッシング」の局面でも機能する。加えて、相手最終ラインに対するタックルやインターセプトの試みも見られ、単なるパッシブな牽制ではなく、ボール奪取までを意識した能動的守備を行っている。
球際の局面でも、低重心かつコンパクトな姿勢で当たり負けせず、1対1の局面でも粘り強く対応するため、前線の第一防波堤として相手のビルドアップに対し効果的な圧力をかける存在となっている。
ラウタロ・マルティネスは、得点力だけでなく、守備面でもチームに多大な貢献をしており、インテルの戦術において不可欠な存在となっている。
ラウタロ・マルティネス|市場価値と移籍情報(2025年5月現在)
市場価値の現状
2025年3月のTransfermarktによる市場価値の更新で、ラウタロの評価額は1億ユーロから9,500万ユーロへと減少した。これは、今季のビッグマッチでのパフォーマンスに課題が見られたことが要因とされている。しかし、彼の今季の成績は依然として高水準で、公式戦40試合で18ゴールを記録している。
移籍の可能性
ラウタロは2024年8月にインテルとの契約を2029年まで延長しており、クラブへの忠誠心を示しています。
この長期契約により、インテルは彼の放出に慎重であり、移籍にはクラブ記録級のオファーが必要とされています。今後の展望
ラウタロ・マルティネスは、インテルの中心選手としての地位を確立しており、移籍の可能性は高くないと見られる。しかし、アーセナルやチェルシーなどのビッグクラブが巨額のオファーを提示する可能性があり、今後の動向に注目が集まる。
ラウタロ・マルティネス|エピソード
ボカ•ジュニアーズの試験に落選
15歳のとき、ボカ・ジュニアーズのユースチームの試験を受けたラウタロは、「スピードとパワーが足りない」と判断され、契約を結ぶことができなかった。この経験は彼にとって大きな挫折となり、一度はサッカーを諦めようとしたが、ラシン・クラブからのオファーを受けて再起を果たした。この転機がなければ、現在の成功はなかったかもしれない。
ヘリコプター恐怖症
2022年のワールドカップでは、アルゼンチン代表として優勝を果たした。その後の祝賀パレードでは、選手たちがヘリコプターで移動する際、ラウタロは飛行機恐怖症であることを明かし、酔っていなければ乗れなかったとユーモラスに語っている。
出典:https://www.mundodeportivo.com
メッシとの会話
2022年のカタール・ワールドカップ中、ラウタロは出場機会が限られていたが、リオネル・メッシから「チームのためにしっかり回復し、重要な存在であり続けてほしい」と励まされた。この言葉は、彼にとって大きな支えとなり、チームの一員としての自覚を深めるきっかけとなった。出典:https://www.footboom1.com
苦難を特徴とする子供時代
「小さい頃、兄と一緒に学校から帰ってきて、昼食は一日中働いていた母がすでに用意していました。家はいつも散らかっていて、練習に行く前に片付けていました。私はベッドを整え、洗濯物を整理し、兄に皿洗いをさせます。なぜなら、兄が汚れているのを見ると気になるからです。子供の頃、私は何も持っていなかった。時々、私は夜にどこで寝るかわからなかった。これらの経験は私を男として形作り、私はそれをピッチに持ち込もうとしています。サッカー以外では、困っている子供たちを助けたり、訪問したりして幸せです。私は彼らの苦労と困難を理解しています」とラウタロは語った。
出典:https://en.nogomania.com
まとめ
ラウタロ・マルティネスは、得点力だけでなく、連携力や守備への貢献、そして戦術理解度の高さといった多面的な能力を備えた、現代的なストライカーである。
今後さらに経験を重ねることで、より一層完成度の高いプレーヤーへと洗練されていくことが期待されており、クラブでも代表でも、その進化から目が離せない。