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ペドリのプレースタイルを詳細分析|守備から攻撃まで全方位で輝く万能型

ツバサ

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華麗なボールタッチと卓越した判断力で中盤を支配するペドリ。

わずか10代でバルセロナとスペイン代表の中核を担うまでに成長した若き才能は、単なる技巧派にとどまらず、試合の流れを読む戦術眼とハードワークでも際立つ存在である。

本記事では、ペドリのプレースタイルを戦術的視点から深掘りし、その真価に迫る。

ペドリ|基本情報

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Pedro González Lópezの基本情報

ペドリ|経歴

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Pedro González Lópezの成績

■ラス・パルマス(UD Las Palmas)
ペドリは15歳でラス・パルマスのユースチームに入り、2019年に16歳でトップチームデビューを果たした。2019-2020シーズンはセグンダ・ディビシオンで主力として活躍し、4ゴール7アシストを記録。若くしてチームの中心選手となり、クラブの歴史に残る活躍を見せた。この活躍が評価され、2020年にFCバルセロナへ移籍した。

■FCバルセロナ
ペドリは2020年にFCバルセロナへ移籍し、すぐにトップチームの中心選手として活躍を始めた。高い技術と卓越した視野で攻守に貢献し、リーグ戦やチャンピオンズリーグで安定したパフォーマンスを発揮している。若手ながらチームの戦術に欠かせない存在となり、2022年にはコパ・デル・レイ優勝にも貢献した。さらにスペイン代表としても活躍し、国際大会で経験を積んでいる。


■スペイン代表

ペドリは2021年にスペイン代表に初招集され、同年のEURO2020で主力として全試合に出場し、大会最優秀若手選手に選ばれた。その後も代表に定着し、2022年のカタール・ワールドカップにも出場。さらに2023年にはUEFAネーションズリーグ優勝を経験し、若くして国際舞台でも重要な戦力となっている。

ペドリ|プレースタイル

ここからはペドリのプレースタイルを詳しく分析していく。

決定的なラストパス

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■ライン間からのスルーパス
中間ポジションでボールを受けて、一瞬の間に背後を刺すパスを繰り出す。スルーパスには**わずかな角度の“曲線”**を与え、GKとDFの間に落とす精密さ。相手CBとSBの“チャネル”を狙う傾向が強く、CFの動き出しとシンクロさせる能力が高い。

■逆サイド展開の視野
密集地帯に誘い込んでから、相手の視野の外にいる逆サイドの選手に精度高く展開。これは、いわゆる“レジスタ”型の展開力というよりも、「ラストアクションの一手」として用いられる。 サイドに張るWGやSBにピンポイントで浮き球を通す技術が優れており、セットプレー明けにもよく使われる。

■ノールック&トリックパス
ペドリは視線とは逆方向にパスを出す能力に長けており、相手DFに予測されにくい。ノールックで味方の足元かスペースへ。足裏やインサイドでわずかに角度を変え、受け手の走るコースを“導く”ように出す。

■1タッチで崩すテンポチェンジ
最終局面での1タッチパスは、ペドリのクイックネスと状況判断の象徴。タメを作った後、急にテンポを上げてフィニッシャーへ流す1タッチ。特に**狭い局面でのダイレクトコンビネーション(例:ワンツー)**は、バルセロナ特有のティキタカ文化の継承を感じさせる。

■相手の背中を突く“逆重心”のパス
ペドリは相手の「逆重心」を突くのが非常にうまく、DFが一歩でも逆を踏んだ瞬間にパスを通す。ボールホルダーとして相手を引き寄せ、**“動かしてから突く”**という発想が特徴的。これはイニエスタにも似たプレー選択であり、「人を動かしてスペースを創る」視点がある。

ペドリのプレス回避能力

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■プレッシャーの“重心”を読む目
ペドリが圧巻なのは、相手が複数人で囲いに来る状況でも慌てず、むしろ一歩待って“重心の揺れ”を誘う点である。相手が前がかりに寄せてきた瞬間、その“傾き”を逆手に取り、あえて間を突くターンやダイレクトのはがしを選択。彼は守備側の「勢い」を利用し、自分の静かな一歩で守備網を“空転”させることができる。

■ワンタッチ×逆足のコンビネーション
ペドリはプレッシャーの中でも両足を自然に使い分けるため、相手が読みづらい。しかも、その多くがワンタッチ、もしくはツータッチ以内での解放となる。

「味方を逃がす」ための脱圧アクション
単に自分が回避するだけでなく、ペドリは周囲の選手を“逃がす”ためにプレスを引きつける動きも多用する。相手のプレスラインを自分に意識させてから、ワンタッチで逆サイドへ展開。特にSBやIHとの近距離三角形を意図的に作り、数的優位を自ら構築して抜け道を作る

■データに裏付けられた安定感
2023/24シーズンのラ・リーガにおいて、ペドリは「プレッシャー下でのパス成功率」が87.9%を記録(StatsBomb調べ)。また、「プレス回避後の前進パス成功率」ではリーグ2位の数値を叩き出しており、ただ耐えるのではなく、前進に転じる能力の高さが際立っている。

知的かつ戦術的な守備対応

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■突出したボール回収能力
2024-25シーズン、統計サイト「WhoScored」によると、ペドリは欧州5大リーグで最多となる161回のボールリカバリーを記録。チェルシーのカイセド(159回)やRCランスのトマソン(158回)らを上回り、守備面でも圧倒的な存在感を示している。

ポジショニングと予測能力の高さ
多くの専門家が一致して評価しているのが、ペドリの「予測力」と「ポジショニングセンス」である。欧州サッカー解説者のマイケル・コックス(The Athletic)は、ペドリについて「彼は守備時にボールの動きだけでなく、相手選手の身体の向きや意図を読み取り、数手先を見据えたポジショニングを取る」と語っている。

■インテンシティとデュエル能力
バルセロナの内部分析でも強調されているのは、ペドリのデュエル時の“踏み込みの鋭さ”である。フィジカルに恵まれているとは言い難いが、身体の入れ方や接触のタイミングが非常に巧みで、結果として2024-25シーズンは52.87%の地上戦勝率を記録している。これはカゼミーロやズビメンディを上回るデータであり、守備的ミッドフィールダーに匹敵する数字といえる。

■チーム戦術との適合性(バルセロナ2024-25)
ハンジ・フリック体制下のバルセロナでは、中央寄りのミッドブロックからポジショナルプレーの中で相手を誘導し、インターセプトから即座にショートカウンターを狙う戦術が採用されている。この戦術において、ペドリの位置取りと守備感覚は不可欠だ。
フリック監督はインタビューでこう述べている。
ペドリの守備は見えにくいが、最も重要だ。彼が数メートルずれるだけで、ボールの回収位置も、次の攻撃の質も大きく変わる。

ゲームメイク能力

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■テンポコントロールの名手
欧州戦術専門誌『Total Football Analysis』は、ペドリのゲームメイクを「試合の“脈拍”を操るプレーメーカー」と評している。特筆すべきは、プレッシャー下でのテンポのコントロール力だ。相手のプレスを逆手に取り、一瞬の“溜め”を作ることで味方のオーバーラップや2列目の侵入を促し、時間と空間を創出する。

■パスの選択と質
英メディア『The Guardian』のコラムニスト、バリー・グレンデニングは「ペドリは“正しい危険”を冒す選手」と語っており、ラストパスやスルーパスの選択肢において非常に的確な判断を下すことを強調している。無謀な縦パスではなく、相手のラインを“半身で裂く”ような角度のパスを狙うことで、守備ブロックの内部に侵入するチャンスを作り出す

■流動的ポジショニングとスペース認識
ペドリは明確な「ポジション」に縛られず、左インサイドハーフからトップ下、時にはサイドレーンにも流れる。『The Athletic』の戦術アナリスト、トム・ワーは「ペドリは、ボールを持たずともゲームを組み立てている」と指摘。ペドリが動くことで生まれるフリーマンの存在が、攻撃全体の流動性を高めている。

■ゲームメイク関連のスタッツ(2024-25)
データによれば、2024-25シーズンにおけるペドリのキーパス数は90分あたり2.4本で、ラ・リーガのMF平均を大きく上回る数値である。1試合あたり11.1本のプログレッシブパスを成功させており、欧州5大リーグの中でもMF全体で上位10%に入るハイレベルな記録だ。アシストに直結しないながらも攻撃の決定機を生み出す「第3者への予備パス(セカンドアシスト)」も多く、攻撃の起点や加速装置としての役割が極めて大きい。

ペドリ|エピソード

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■ペドリの“サッカー脳”は祖父譲り
ペドリの家族はもともとラス・パルマスの熱狂的なサポーターであり、祖父はクラブの創設メンバーの一人である。家の中では常にサッカーの話題が飛び交い、幼少期のペドリは試合を観ながら「なぜこのパスが正解か」を家族と議論していたという逸話もある。

■レアル・マドリードのトライアル不合格
ペドリは若い頃、レアル・マドリードのトライアルを受けた。しかし、「プレースピードが遅い」「体格的に不利」という理由で不合格にされてしまう。だが、当時の彼はすでに空間認知能力やポジショニングのセンスに秀でており、周囲の指導者たちは「いつか評価される」と確信していたという。

■バルセロナ加入当初、最初の練習で全選手を驚かせた
2020年にバルセロナに加入した18歳のペドリは、トップチームの初練習で優れたパフォーマンスを披露。セルヒオ・ブスケツは「ほとんど教えることがない完成された選手」と評価し、この言葉がクーマン監督によるプレシーズン直後のトップチーム昇格決定につながった。

■バナナを通じた食糧支援活動
2021年、ペドリは「Plátano de Canarias」のアンバサダーとして、スペイン代表がユーロ2020で移動した距離に応じてバナナを寄付するキャンペーンに参加した。スペイン代表は合計766.5kmを移動し、ペドリ自身はそのうち76kmを走行した。この活動により、80,000kgのバナナが全国のフードバンクに寄付された。

まとめ

ペドリは、その卓越した技術と戦術理解によって、バルセロナとスペイン代表の中盤に欠かせない存在となっている。

巧みなポジショニング、的確な判断力、そして献身的な守備まで兼ね備えたプレースタイルは、すでに世界トップクラスと評されるにふさわしい。

まだ若い彼の成長は止まることを知らず、今後の進化とさらなる飛躍が大いに期待される。

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