元スペイン代表MF シャビアロンソ率いるレヴァークーゼンは、2023-2024シーズンのブンデスリーガで史上初の無敗優勝という偉業を成し遂げた。
その中で目覚ましい活躍を見せたのが、ドイツ代表MF フロリアン・ヴィルツである。
シャビアロンソ監督の下で更なる成長を遂げ、公式戦47試合で18ゴール20アシストを記録。ブンデスリーガ年間最優秀選手賞にも輝いた。
続く2024-2025シーズンには公式戦50試合で19ゴール18アシストを記録している。
昨季に続き圧倒的な活躍を見せるヴィルツに対して、バイエルンミュンヘンやマンチェスターシティなどの強豪クラブが強い関心を示す報道もある。
今回の記事では、そんなフロリアン・ヴィルツのプレースタイルを徹底解説する。
Contents
F・ヴィルツ|基本情報
Embed from Getty Images【基本情報】 | Florian Wirtz |
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①生年月日 | 2003年5月3日(22歳) |
②国籍 | ドイツ ![]() |
③身長/体重 | 176cm/72kg |
④所属クラブ | バイエル・レバークーゼン ![]() |
⑤ポジション | MF |
⑥背番号 | 10番 |
⑦利き足 | 右足 |
⑧推定年俸 | 750万ユーロ |
F・ヴィルツ|経歴
Embed from Getty Images年 | クラブ | 出場 | 成績 |
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19/20 | レバークーゼン ![]() | 1 | 1G:0A |
20/21 | レバークーゼン ![]() | 12 | 5G:6A |
21/22 | レバークーゼン ![]() | 15 | 7G:10A |
22/23 | レバークーゼン ![]() | 24 | 1G:6A |
23/24 | レバークーゼン ![]() | 29 | 11G:12A |
24/25 | レバークーゼン ![]() | 7 | 10G:13A |
1.FCケルン
1.FCケルンの下部組織で育ったヴィルツは、2018年にU-17に昇格する。2018-2019シーズンは14試合4得点を記録した。翌年2019-2020シーズンは10試合8得点を記録した。
バイエル・レバークーゼン
2020年1月31日にレバークーゼンへの加入が決定。レバークーゼン史上最年少の17歳15日でブンデスリーガ・デビューを果たした。これは、ドイツ代表MFカイ・ハフェルツが持っていたクラブ最年少デビュー記録(17歳126日)を大きく更新した。自身4試合目の第30節 バイエルンミュンヘン戦ではリーグ最年少得点記録(当時。昨年12月にドルトムントのFWユスファ・ムココが更新)を樹立した。
F・ヴィルツ|プレースタイル
シャビアロンソ率いるレバークーゼンで、攻撃の要として活躍するフロリアン・ヴィルツ。
ハーフスペースの有効活用、高いボールコントロール技術、得点・アシストでの貢献、豊富な運動量など、優れた点を挙げればキリがない。
ここでは、ヴィルツの素晴らしい点を幾つかピックアップして、それぞれの詳細を観ていこう。
①ハーフスペースの有効活用
Embed from Getty Imagesシャビアロンソの戦術では「ハーフスペースの制圧」が極めて重要だ。
ヴィルツはこのエリアで自由に動きながら、敵の守備陣形をズタズタに切り裂く存在。このプレーこそがヴィルツの真骨頂と言えるだろう。
分かりやすく言えば、ボルシア・ドルトムント時代の香川真司を思い浮かべて欲しい。ライン間でボールをバンバン引きだして、狭いエリアで前を向いて、パスにシュートに手を付けられなかった。
ヴィルツも香川真司と同様に、このプレーを得意とする選手だ。
現代サッカーはどんどんコンパクトになり、強度が高まり、スペースと時間が少ない中でのプレーを余儀なくされる。
そんなサッカーが流行する中でもヴィルツは、ライン間のわずかなスペースでボールを引きだすことを恐れない。
ボールを受けた後は、相手に潰される前に前を向き顔を挙げて、パス・ドリブル・シュートの選択肢を匂わせながら、相手DFを混乱に陥れる。
パス、シュート、ドリブル、なんでも出来る上に、ボールを失わない。豊富なアイディアと創造性を発揮して、守備陣形をずたずたに切り裂くプレーは、まさにピッチの魔術師。
レバークーゼンの攻撃ではヴィルツのこのプレーが極めて重要で、そのおかげもあり、サイドアタッカー(LWB グリマルド・RWB フリンボン)やストライカー(CF ボニフェイス・CF シック)の強力な個性が躍動している。
②連動性の高さ
Embed from Getty Imagesヴィルツは単独で輝くタイプではなく、味方との関係性の中で輝く選手だと言えよう。高いサッカーIQを持ち、状況に応じて幅広いエリアに顔を出す。
効果的な位置取りで味方をサポートし、プレス回避の出口役も担っている。
・グラニト・ジャカとの関係
中盤の底でゲームをコントロールするジャカとの相性は抜群だ。ヴィルツはジャカからの縦パスを引きだしてターンし、一気に攻撃を加速させる役割を担っている。繊細なボールタッチ、狭いエリアで前を向く技術を持つヴィルツだからこそ、可能なプレーだ。
・ジェレミー・フリンボンやアレハンドロ・グリマルドとの関係(両ウイングバック)
レバークーゼンの戦術ではWBの攻撃力をいかに最大化するかが重要である。その調整役として重宝されるのがヴィルツだ。ヴィルツが中央で相手を複数人も引き付け、彼らをフリーにする場面が多くみられる。
・パトリック・シック、ボニフェイスとの関係(前線)ヴィルツは前線の選手に対して絶妙なタイミングと角度、速さのスルーパスを供給する。彼の判断力とタイミングの良さが、FWの得点機会を最大化する。
レバークーゼンの戦術において、彼の連動性の高さがチームに流動性とリズムを生み、スムーズな攻撃展開を可能にする。
③得点・アシストでの貢献
Embed from Getty Imagesヴィルツは得点・アシストの両方が得意なため、相手DFにとって非常に狙いが絞りづらい選手である。
具体的にどのように得点やアシストを決めるのか、いくつかの側面を見ていこう。
・基礎的なシュート技術の高さ
フロリアン・ヴィルツのシュート技術は、非常に多彩で高い精度を誇る。基本的にはコースを狙いすましたシュートが多い。ただ、パワーも兼備し強烈なミドルシュートを叩き込むことも可能だ。決定機での冷静さは目を見張るものがあり、GKの動きをよく見てコースに蹴りこむ。左右両足から正確なシュートを撃てる点も強み。
・個人技による打開
ヴィルツは個人の打開力にも優れ、卓越した個人技から得点・アシストをできる選手だ。スピードやフィジカルは平均的だが、独特なリズムのドリブル・巧みなドリブルのコース取り・緩急で相手を剥がし、単独で決定機を演出する。パス・シュートの両方の選択肢があるため、相手DFは距離を詰め切れず、ヴィルツが自由な時間を持てる。ちなみに、今季は公式戦50試合19得点18アシストを記録している。
・ボックス内でのポジショニング
ヴィルツの得点場面を振り返ると、ボックス内でワンタッチで合わせる得点が多い。その最大の理由は、ボックス内でのポジショニングが巧妙であるためだろう。相手DFのちょうど死角に位置取り、この時点で既に優位性を確保している。また、侵入するタイミングも完璧で、やや遅れ気味でちょうどクロスが挙がるタイミングでドンピシャで侵入する。
・創造性視野の広さ
シャビアロンソから攻撃の舵取りを任されるヴィルツは、前線のタレントを活かす術を知っている。視野が非常に広く、攻撃時はサイド・中央にかかわらず、複数の選択肢を確保する。データ分析プラットフォーム「Soccerment」は、ヴィルツが「1試合あたり2.22本のキーパスを記録しており、これは同年代の選手と比較しても非常に高い数値である」と報告している。また、視線を使ってパスの意図を隠す巧妙なフェイントを駆使しているとの指摘もある。
④豊富な運動量
Embed from Getty Imagesヴィルツの豊富な運動量は、レバークーゼンの戦術において、攻守で重要な役割を果たす。
・動き直し
パスを出した後に即座に再び動き直し、相手の守備ラインを崩す動きが特徴だ。パス&ゴーの意識が高く、パスを出した後にそのままスペースへ走り込み、打開を図る。
・崩しのキーマン
ゴール前でのダイアゴナルラン、ワンツーやダイレクトパス、空いたスペースへ走りこむ、スペースを創出するフリーランなど、頭を使って走ることにより攻撃を活性化する。また、立ち位置を頻繁に変えることにより、相手の守備陣形を混乱に陥れる。
・プレッシングとボール奪取
相手がボールを持った瞬間に積極的にプレッシャーをかけ、ボールを奪いに行く。ファーストディフェンダーとして、周囲と連動しながら組織的なプレスを仕掛けコースを限定する。
・切り替えの速さ
シャビアロンソ率いるレバークーゼンは即時奪回を重視するチーム。ボールを失った場合、ヴィルツは瞬時に守備意識を切り替えて、ボール奪回を試みる。また、レバークーゼンの戦術では高速カウンターも重要。ヴィルツは素早い切り替えから攻撃的なパスを供給し、カウンターを成功に導く。
F・ヴィルツ|市場価値
Embed from Getty Imagesフロリアン・ヴィルツの市場価値は、2025年5月時点で約1億3000万ユーロ(約180億円)とされている。
これは、ブンデスリーガで最も高い評価額であり、世界的にもトップクラスの若手選手の一人と見なされている。
レヴァークーゼンは、ヴィルツの移籍金を最低でも1億5000万ユーロと設定しており、これにより彼は史上4番目に高額な選手となる可能性がある。
また、2026年には契約延長が予定されており、その際に発動可能な解除条項が1億2500万ユーロに設定される見込みだ 。
ヴィルツは、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘン、リヴァプール、レアル・マドリードなど、欧州の強豪クラブから注目されている。
特にマンチェスター・シティは、ケヴィン・デ・ブライネの後継者としてヴィルツを獲得する意向を示しており、積極的な交渉が行われている 。
ヴィルツの市場価値は、今後のパフォーマンスや移籍市場の動向によって変動する可能性があるが、現時点では世界でもトップレベルの若手選手として高く評価されている。
F・ヴィルツ|エピソード
Embed from Getty Images・ハフェルツとの関係性:元レバークーゼンのドイツ代表MF カイ・ハフェルツから多くを学んだと語り、プレー面で大きく影響を受けたそう。
・大のじゃがいも好き:ジャガイモ料理をランキングづけした際、ヴィルツは「ノーマルなジャガイモが一番かな」と語った。
・バルセロナファン:ヴィルツは過去に、自身がバルセロナファンであることを公言している。
・姉はサッカー・ドイツ代表MF:姉のジュリアーネ・ヴィルツは、ヴェルダー・ブレーメン所属のサッカー選手。女子ドイツ代表に選出されたこともある。
F・ヴィルツ|プレー動画
まとめ
マンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘンを始めとして、ビッグクラブから関心の噂が絶えないドイツ代表MF フロリアン・ヴィルツ。
『Sports Illustrated』のインタビューで、ヴィルツは将来について「いつか自分の居心地の良い環境を抜け出し、新しい経験をしたいと思っている。」と言及しており、今後のビッグクラブ移籍は確実だろう。
直近2シーズンのプレーぶりは既に世界トップレベルにあり、今後の活躍次第ではバロンドール受賞も夢ではないだろう。
わずか22歳のフロリアン・ヴィルツが今後どこまでの高みに上る詰めるのか、今後も目が離せない。